UfiSpaceの102.4Tbps液冷スイッチ登場、AIの通信機器にも冷却の見直しが迫る
ニュースの概要
ネットワーク機器メーカーのUfiSpaceが、OCP Global Summit 2026で、液冷方式の102.4Tbpsネットワークプラットフォームを実演した。心臓部にはBroadcomのTomahawk 6というスイッチ用チップを使い、大きさは2OU(=オープンラック規格で2段分)、ラックの共通仕様ORv3に対応する。狙いは、1.6Tbps級というAI向け次世代ネットワークで、熱をどう処理するかの見通しを示すことだ。同社は、冷却設計が現実的であること、そしてシステム全体として導入に近い段階にあることを訴えた。生成AIや大規模推論の拡大で通信量が急増するなか、サーバーだけでなくスイッチも冷却の見直しを迫られている。
引用元: UfiSpace、AIネットワーク向け102.4Tbps液冷プラットフォームを実演(Vietnam Investment Review)
分析・見解
通信機器も熱の限界に近づいている
Tomahawk 6は、1個で102.4Tbpsをさばくスイッチ用チップである。前世代の51.2Tbpsから処理能力が2倍になった。1.6Tbpsのポートなら、単純計算で64本をさばける。ここで問題になるのが熱だ。1.6Tbps級の光モジュール(=光信号と電気信号を変換する差し込み式の部品)は、1個で20ワット台後半との見方が多い。64個で1.5キロワット前後になる。チップ本体や電源の損失を足せば、1台で数キロワット規模になる。薄い箱の中でこれを空気だけで冷やすのは、かなり苦しい。
液冷ラックに残る空冷スイッチの飛び地
AI向けラックでは、GPUサーバーの液冷化が先に進んだ。NVIDIAのGB200 NVL72のように、ラック内のスイッチ部分まで液冷にした例もある。ただ、一般的なイーサネットのスイッチは今も空冷が主流である。すると、液冷ラックの中に、ファンと空気の通り道を残さねばならない。せっかく配管で熱を逃がす設計にしても、スイッチが「空冷の飛び地」になる。今回の展示は、この飛び地をなくす選択肢を、オープン規格の枠内で示した点に意味がある。ORv3は、OCPが定めるラックと電源の共通仕様である。独自規格に縛られず、複数の事業者が同じ土台で設計できる。
高性能な一台が全体の電力を減らす可能性
意外な点がある。1台あたりの消費電力が増えても、ネットワーク全体では減りうることだ。ポート数が多いスイッチなら、GPUをつなぐ段数を減らせる。ポート数が倍になれば、2段構成でつなげるGPUの数は、理屈の上で約4倍に増える。段が減れば、スイッチの台数も、段をまたぐ光ケーブルや光モジュールの数も減る。光モジュールは両端に要るため、本数の削減は電力と故障点の両方に効く。つまり、液冷スイッチは「熱い機器を増やす話」ではなく、「熱を集約して全体を減らす話」として読める。
実演と量産の間に立ちはだかる保守の壁
ただし、実演は量産ではない。最大の難所は保守である。差し込み式の光モジュールは、運用中に抜き差しする。液冷にすると、冷却板への密着、水漏れ対策、交換時の作業手順が一気に難しくなる。配管の継ぎ手(=外しても液が漏れにくい接続部品)の信頼性も、数千本規模では無視できない。光学部品をチップに近づけるCPO(=光部品をチップと同じ基板に載せる方式)が普及すれば、構造は変わる。それでも当面は、液冷とCPOが併走する期間が続くだろう。1年後に問われるのは性能ではなく、現場で交換できるかどうかである。なお、実演機の詳しい消費電力や冷却水の条件は、今回の報道からは分からない。数値が出そろうまでは、評価を急がないほうがよい。
ビジネスへの影響
新設や改修では通信機器の冷却水も見込む
これから設計するAI向け施設では、冷却水の配管をサーバーだけの話にしないほうがよい。スイッチが液冷になれば、ラック内の分岐や継ぎ手、流量の余裕が変わる。後から足すより、最初に予備の口を設けるほうが安上がりである。冷却水の温度条件も確認したい。液冷サーバーと同じ水系統を共用できるかで、設備の台数が変わる。電力も同様で、1ラックあたりの容量にネットワーク分を明確に見込んでおく。
調達の前に確かめておきたい三つの点
第一に、規格への適合である。ORv3などの共通仕様に沿っていれば、後で別メーカーの機器に替えやすい。第二に、保守手順である。光モジュールの交換時に液を止める必要があるか、現場の担当者だけで対応できるかを確認する。第三に、供給体制である。Tomahawk 6搭載機は各社が準備を進める段階で、納期や導入実績はこれから見えてくる。見積書には、本体価格だけでなく、継ぎ手や交換部品の費用も別項目で出してもらうとよい。
小規模な事業者は急がず備える
すべての企業が今すぐ液冷スイッチを買う必要はない。1.6Tbps級のネットワークが要るのは、数千規模のGPUを束ねる大型の学習基盤が中心だ。日本の多くの事業者や企業にとって、当面は800Gbps級の空冷機器で足りる場面が多い。ただ、冷却水の系統や床の耐荷重、停電時の冷却維持といった土台は、数年先を見て決めておきたい。仕様書に「ネットワーク機器の液冷対応を将来の選択肢とする」と一行書いておくだけでも、後の手戻りを減らせる。